対談
第58回:(株)HCI代表取締役社長 奥山浩司(剛旭) ×大阪府和泉市辻宏康市長
今の活動と取り組み(第2話)
第2回目の対談は、和泉市の辻市長と株式会社HCIの奥山社長が今、最も力を入れて取り組んでいることについて聞いてみました。変化の激しい時代を担うリーダーとしての取り組みや制度作りなどについても未来を見据えて視野の広い考察がありました。対談もますます熱を帯びてきます。
宮西: 辻市長が現在取り組んでいることについて教えてください。
辻: 今はやはりコロナ対策が第一優先ですが、ニューノーマルの社会に入って、さまざまな課題があります。特に重要なのは子育て、教育、医療、福祉、防災、防犯の6つです。これらについてはハードもソフトも充実させていきたいですね。まず子育てですが、具体的にいうと、待機児童を減らすことです。また子育て世代の求めるものは教育の充実です。
奥山: 特に和泉市で力を入れていることはありますか?
辻: 人材育成です。他者に対してやる気を出してもらうのはとても難しいものです。
私が提唱しているのは「仕事の報酬は仕事」ということです。和泉市役所で多くの職員が知恵を絞り、汗を流すことによって和泉市が少しずつ住みよい夢のある街になればと願っています。そこで一所懸命がんばって成果を出した職員には、よりやり甲斐のある重要な仕事が与えられるとしています。もちろん最終的には給料や待遇も変えていこうとは思いますが、このような形でやる気を出して取り組んでいただきたいと思っています。
辻: 医療については、市立病院の救急医療を再開するとともに、平成30年には総合医療センターとして再生のスタートを切ることができました。これから様ざまな福祉活動にも力を入れたいですし、市民が住みやすく安心して暮らせるためには防災や防犯対策も必要だと思っています。
宮西: 自然災害や物騒な事件も増えている昨今、今後ますます大切になりそうですね。
辻: この庁舎も防災の見地から新設を行い、2021年5月にオープンしました。現在は食堂なども建設中であり、2023年1月にはグランドオープンします。また、防犯対策として、市内に防犯カメラを設置しています。また大阪府の事業でもありますが、和泉警察署も新しく和泉市が所有している土地に移転してもらうことになりました。ほかにも環境問題などもあると思いますが、当初は市民に最も密着した課題を解決していきたいと思っています。
奥山: 学校教育ではどのようなことを考えておられますか?
辻: 現在はコロナの関係もあり、児童生徒1人1台学習用パソコンを配備しています。デジタル庁も9月1日に設置されましたし、国とも連携して行っています。
また和泉市では、平成29 年度より市内全ての中学校区で小中一貫教育を実施しています。平成29(2017) 年4月には、本市で初となる施設一体型義務教育学校(小中一貫校)「南松尾はつが野学園」を開校しました。小学校を卒業して中1になるときのギャップが出ないように、ここで大きく途切れない教育を考えています。中学1年を7年生としており、中学3年は9年生となります。すなわち1年から4年がファーストステージ、5年から7年がセカンドステージ、8年、9年がファイナルステージということです。
このシステムはクラブ活動などにも大変有利です。例えば吹奏楽などのクラブ活動も通常ならば中学生に入ってからですが、このシステムですと小学校5年から入ることができるのです。
奥山: それは新しい試みですね。
辻: そのような学校をあと2校作ろうと思っています。昨今では全国的に少子化が進んでいますが、和泉市も例外ではありません。特に過疎化の進んでいる南部地域にある槇尾中学校区内の横山小学校、南横山小学校やその小学校から進学する槇尾中学校では、児童生徒数の減少が進んでいます。そこで槇尾中学校区の更なる教育環境の充実を図るために、南松尾はつが野学園と同様の効果を期待して、横山小学校、南横山小学校、槇尾中学校を統合し、すでに南横山小学校で導入している市内全域から通学できる特認制度を継承した新たな施設一体型義務教育学校(小中一貫校)「(仮称)槇尾学園」として、現槇尾中学校敷地内に新校舎を整備します。これを魅力ある学校づくりへと繋げるためには、今まで学校づくりに関わってきた地域住民や保護者、教職員等の意見を反映させたいと思っています。そのため、令和元(2019)年に設置した学校開校準備委員会や槇尾中学校区各校の教職員等のワークショップを開催し、多くの意見を参考に整理しながら検討を進めているところです。
奥山: 教育といえば我々は、ロボットアイデア甲子園という、学生を対象とした所謂ロボコンを行っており、ロボットに関する多彩なアイデアで競いあってもらっています。実際にロボットをみてもらい、問題解決型のロボットシステムを創造してもらいますが、そのアイデアがユニークで、奇抜で、若い人の柔軟な考えというのは、とても素晴らしいと思います。このような取り組みは、現代の若者にとってとても重要なことだと考えています。例えばそういう企画を和泉市でも検討してもらえますか?
辻: もちろん、大いにあり得ます。例えば家に帰ったら自動的に電気がついて、料理の準備も宅配で全部できている。今後、そのような環境づくりを考えたらロボットに頼らざるを得ません。そしてそのような生活の在り方を子どものころから教育するのは非常に大切なことになると思います。
これから国でもサイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムで、経済発展と社会的課題の解決を両立する可能性をもつソサエティ5.0を実践する法令化が進んでいますし、就労人口がどんどん少なくなれば、どうしてもロボットに頼らざるを得ない社会になると思います。そして、それが住みよい社会を創ることを期待しています。
辻: 我々も未来に向かって現実を作り上げるために、5年後、10年後というような比較的近い未来のことだけではなく、20年先のことまで考えていきたいと思っています。
和泉市は現在65周年ですが、100周年になったときに、どのような街になっていたらよいのかという課題を出し、未来から現在を俯瞰して、現時点でやるべきことを決める取り組みをしています。
そのため1年半前に役所内でアンケートをとりました。100周年になった時のことを想定し、大きな視野でどんなことでもいいから書いてほしいと伝えたところ、多くのプランが出されたのですが、その中に「ロケットを打ち上げたい」というプランがありました。まさか、それはありえないだろうと思いましたが(笑)しかし、それを毎日みていると、可能性が見えてくるかもしれません。
宮西: 奥山社長の力も得られますしね。
奥山: 任せてください(笑)
奥山: スマート化の推進の先はソサエティ5.0だと思います。これから5Gが広がると今までできなかったこと、例えば医療面でいったら、遠隔で手術をするなどのデジタル技術がさらに進むためにもロボットとAIが欠かせません。
辻: 和泉市には技リンピックといって公民協働のイベントを平成26(2014)年から稼働しています。テクノステージ和泉に立地している企業の技術をいかし、企業同士でミニカーを走らせたりもしています。また和泉市には大阪産業技術研究所があります。大阪市と大阪府が共同で行っていますが、日本でもTOP5レベルに入る研究所で工業用専用地域もありますから、奥山社長の力に加え、本当にロケットを打ち上げられるかもしれないと思ったりしています(笑)
コメント
さまざまな最先端をいく取り組みをされている辻市長。お話を聞いていても、ここが住みよい街であることに間違いがありません。また今後、市役所にロボットが現れたり、和泉市からロケットが打ち上げられたりする可能性も感じられました。次回はいよいよ、お二人のビジョンについて語っていただきます。(最終話に続く)