対談
第15回:(株)HCI代表取締役 奥山浩司(剛旭) × 泉大津市長 南出けんいち
泉大津から始まる物語(第1話)
大阪府の南部に位置する泉大津市。近畿地方の交通のへそともいわれ弥生時代の池上曽根遺跡や、江戸時代の町並みが残る「浜街道」など、歴史的文化の息づく町。古来より和泉の国の外港として栄え、随筆や土佐日記など紀行文にも登場してきました。また日本一の毛布の生産地として有名です。今、新しい時代に向けて、38歳という若くエネルギッシュな市長が提唱する熱い息吹に触れてきました。
宮西: まず始めに泉大津市という町についてお二人の関わりや思いなどを教えていただけますか?
南出市長(以下南出): 私は泉大津で生まれ育ちましたが、大学時代は兵庫県の西宮市に、ビジネスマン時代は大阪市に住んでいました。そこでこの町を内外から見ることができてよかったと感じています。町の可能性については第一に地の利のよさがあげられるでしょう。関西国際空港へ電車で20分、なんば駅に20分。鉄道、バスターミナル、高速道路の乗降口もあり、近畿2府4県にほぼ1時間以内で到達します。また国際港湾都市としても指定されており、世界への玄関口にもなっています。
そして毛布生産日本一、国内シェアの95%は泉大津ということで「ザ・毛布シティ」として全国的にも売り出しています。さらに今、産業面において新しいモデルを官民連携で作りあげ、斬新な価値観づくりを目指しているところです。
奥山社長(以下、奥山): 私は大阪の大東市生まれですが、株式会社HCIを泉大津市の拠点として経営しています。創業して15年ですが、最初は和泉市にて創業し岸和田市に移転、そして泉大津市で9年目になります。今ではおかげさまで日本全国から世界まで、たくさんのお客様に来ていただける会社になりました。本社は式内町にあり、泉大津駅からは徒歩で15分くらいです。お客様には利便性がよいと大変喜ばれています。
さらに当社には泉大津市の社員が3割います。地元の企業で働くのはモチベーションの高さにもつながるのではないでしょうか。地元を愛し、よくしていこうという思いの強い社員やパートさんだからこそ、地域とのつながりをより一層大切にし、チームワークもよく、一生懸命に働いてくれるので心から感謝しています。本当によいご縁をいただいていますね。ありがたいことです。
南出: この町の毛布も人も温かいですからね(笑)
宮西: お二人が町に還元したいことは?
南出: 恩返ししたいことはたくさんあります。まず地の利の優位性を生かし国際ハブ都市を目指したいです。国内外のさまざまなところから人やコンテンツが集まり、よりよいアイディアやコミュニケーションが育まれるような、活気あふれる都市として、世の中に新しく有意義な価値を提供することを目標にしたいと思います。もちろん、これまで先人が培ってきたものを継承発展していくことを大切にしますが、それのみならず、オセロゲームならば最初の1枚目のような価値観の転換をこのまちから発信していく予定です。
そしてこれからの世の中における新価値観のベースを作っていきたいと思うのです。激動の世の中の変化をどのように生かしていくか。それが大きなチャンスになるのではないかと思いますし、そのようなムーブメントや勢いがひいては市民の誇りにもなると信じています。
奥山: 我々も企業として、この町に貢献できることはいろいろあるかと思います。HCIはケーブル製造装置メーカーから、現在はロボットシステムインテグレーター(以下SIer)として大手企業の取引先が多かったので日本国内のみならずグローバルに仕事をしてきたので国際的な競争力が身につきました。このような技術力、競争力は必ず地域に貢献できると思っています。
具体的には福利厚生の充実などもありますが、意識の面も大切にしています。8時間以上も会社で働いてもらっているわけですから、いかにこの長い時間を充実した時間にできるかが大切。機械装置作りやロボットシステム作りで日本や世界の人々に貢献できていることを社員一人一人に自覚していただき、この先のビジョンをもって日々過ごしてもらえたら嬉しいですね。
南出: 確かに目的意識が大切ですね。我々も親日アジアの方の語学学校を誘致していますが、目的意識がはっきりしていると成果も大きいです。
宮西: 海外と日本では常識も異なることが多いので、よりよいコミュニケーションのために日本の慣習や考え方なども伝えていきたいですね。
南出: まさにその通りです。国際ハブ都市を目指し、国際社会が進展すれば自分たちが何者かというアイデンティティをもつことが大切ですし、同時に、外国の方のもつ多様性を尊重し、受け入れる柔軟性も必要になるでしょう。さらにはAIやIoTの技術が進んでくれば、世の中全体がロジカルシンキングに傾いていきますが、だからこそ人間としての豊かな感性を育むことが今後の大きなテーマになってくるのではないかと思います。
南出: 泉大津市は地場産業の毛布製造も盛んである一方で新しい産業としてのロボットを製作するHCIさんなどがあり「ものづくり」で発展してきた町ですから、この特性を活用していきたいですね。激動の時代とは言え、どんなに時代が変わっても「ものづくり」はなくなりませんので、この分野に注目し、人々に関心をもってふれてもらう機会を作っていきたいと思います。
また産業は一度途絶えてしまったら立ち上げることが難しいですから、市としてもやる気のある会社や技術をもっている企業などには、しっかりと手を差し述べて連携をしていきたいと思います。それがやがては自国の発展につながり、世界に対しても人材教育にも発展すると思います。そのような機能がまちに備われば大きな貢献ができるのではないでしょうか。一緒になって作り上げていきたいですね。
奥山: 精一杯頑張らせていただきたいと思います。(第1話終了)
南出けんいち(賢一)市長のプロフィール1979年(昭和54年12月20日)泉大津市生まれ。1995年泉大津市立小津中学校卒業、1998年浪速高等学校卒業、2002年関西学院大学商学部卒業、同年株式会社ニチロ入社、2004年株式会社ニチロ退
社、2005年 9月有限会社南出製粉所入社、2007年4月泉大津市議会議員初当選。(以降3期連続当選)2007年・2011年の泉大津市議会議員選挙にて史上最高得票でトップ当選。2015年は無投票再選。2016年12月泉大津市長選で当選。2017年1月泉大津市長就任。趣味:料理、スポーツ、カフェ、ドライブ、釣り、読書。高校・大学ではボクシングに打ち込み全日本選手権ベスト8。
好きな言葉 :知行合一。我が為すことは我のみぞ知る。勝ちに不思議な勝ちはある。負けに不思議な負けはない。
コメント
昨年37歳にして最年少の市長当選し革新的な政策を行う南出市長と、ロボットに情熱をかける奥山社長の対談は大いに盛り上がりました。
次回は新しい時代の希望にあふれた町づくりの具体的な提案をお話くださいます。お楽しみに。
(第2話に続く)