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社長のコラム

奥山浩司(剛旭)社長コラム

by 宮西ナオ子 Presents

富士山麓に広がるファナック本社を訪れ、工場や施設を見学させていただいた後、広々としたお部屋でビデオを見ながら、ファナックの歴史を教えていただきました。会社と共に成長されてきた稲葉専務執行役員と奥山社長の歩んできた道。ファナックのロボット開発のはじまりとHCIのロボットシステム開発のはじまりに話が盛り上がりました。




↑世界最大可搬重量を持つM-2000iA

奥山: この度は富士山麓の素晴らしい御社にお招きいただき、工場や施設を見学させていただきまして、本当にありがとうございます。

稲葉: こちらこそ、遠路はるばるお越しいただきありがとうございます。弊社はCNCとサーボモータが基幹商品になります。創業者であり名誉会長の故稲葉清右衛門が富士通(当時の富士通信製造株式会社)にプレス工場の係員として入社したのが1946年でした。その後、1955年に工作機械向けのNCの開発を担当することになり、1956年に日本で民間初のNC装置の開発に成功しました。とはいえ当初は赤字続きでとても苦戦したようです。

奥山: 驚きですね。そんな時代があったとは・・・。

稲葉: 最終的にはNC部門は富士通の中でも高収益を得る部門まで成長しました。その当時から工作機械メーカーと密接な関係を持ちながら、日本の機械加工プロセスの自動化に努めてきた流れがあります。



稲葉: 1955年にNCの開発をスタートさせて以来、一貫して工場の自動化を追求してきましたが、1972年に富士通から分離・独立し、「富士通ファナック株式会社」が設立されました。その後、1977年にファナック初となる独自設計第一号として開発されたのが円筒座標型の FANUC ROBOT MODEL 1です。

奥山: 社名を「ファナック」に変更したのは?

稲葉: 1982年です。その年にGMとの共同出資により、米国にGMFanuc Robotics Coporationという合弁会社を設立しました。これが自動車産業における産業用ロボット事業の参入のきっかけです。合弁会社を通して、自動車産業におけるロボットのニーズを把握することができました。1992年に完全子会社化しており、現在はFANUC Americaとして米国の拠点になっています。



奥山: 稲葉さんが入社されたのは、どのタイミングですか?

稲葉: 2009年です。会社の歴史を語るには、まだまだ未熟者でおこがましく感じております…

宮西: お生まれになったのは?

稲葉: 1978年です。

宮西: ロボットの商品化の翌年なんですね。

稲葉: そうですね。私が入社した前年に世界最大の可搬質量を持つM-2000iAシリーズが商品化され、入社した年にはゲンコツロボットが商品化されました。ファナック独自の手首構造で組み立てや搬送など、幅広い用途に対応可能したものです。入社後、私が最初に手掛けたのは振動を抑えて滑らかな高速動作を実現する機能(学習制振機能)です。これを商品化しました。 


↑ゲンコツロボットM-1iA


奥山: 世界初、35kg可搬の高可搬重量である協働ロボットを商品化されたのが2015年。HCIはこのロボットを関西初で導入し、それ以後、ロボットセンターで活用しています。


稲葉: 有難うございます。そうです、そして2019年の国際ロボット展においてCRX-1OiAという安全性、使いやすさ、高信頼性を追求した新協働ロボットシリーズを発表しました。お陰様で本機種は現在大きな注目を集めています。




↑CR-35iA HCI ROBOT CENTERで展示中

奥山: 素晴らしい歴史と実績ですね。それでは、弊社の紹介もさせていただきたいと思います。HCIは、2002年にケーブル製造装置メーカーとして、撚線機(よりせんき)と呼ばれる装置を開発し、創業しました。

稲葉: 撚線機事業から始まり、システムインテグレータ事業を新規に立ち上げたのですね。そこにはどのようなきっかけ、必然性があったのですか?

奥山: はい、ロボットは2008年から始めたので、まだまだ歴史は浅いです。ケーブル製造装置はインフラ的なところがあり、お蔭様で潤沢に需要がありました。ケーブル製造装置の大枠なシリーズは約15年かけてラインナップしました。しかし、2008年にリーマンショックを直面し、厳しい状況になることが予測できたので、将来的な展望を考えた時、これからはロボットだと思いました。ロボットは、人手不足問題に対し工場は勿論のこと、サービス業界他、垣根の無い業界で活躍すると確信していました。そしてもうひとつのきっかけはガンダムです(笑)。自分はガンダム大好きのガンダム世代なので、いつかロボットに関わりたいと思っていました。




↑協働ロボットCRX-10iA

奥山: 2008年に産業用ロボットのシステムインテグレータを始めたので、まだ15年足らずですが、元々撚線機などの機械メーカーとしてのノウハウがあったので、素養がある中からロボットに入っていけたのはラッキーだったと思います。

稲葉: 撚線機事業で蓄積された要素技術のバックグラウンドが御社の差別化につながっているのですね。そして何より、奥山社長のロボットへの熱意の凄さに感銘します。

奥山: 有難うございます。ロボットシステムを作るようになり、自分のロボットに対する熱意が社員みんなに伝わり、ロボット好きな社員が更に集まることで、画期的なシステムを構築できていることがとても嬉しいですし、ロボットメーカーさんにもご協力賜っていることに感謝し、共にウインウインで成長していきたいと考えます。

稲葉: 御社のようなシステムインテグレータ事業を行うパートナの方々によって、様々な分野におけるロボットの普及が進んでいます。そのために、我々もマーケット情報、ニーズを理解して、パートナの方々、お客様に喜んでいただける商品を提供してゆきたいと思います。奥山社長が仰る、ウインウインの形に貢献できるように努めます。




奥山: 昨今ではコロナ禍でロボットの位置づけが大きく変わってきたように思います。人と人が接触する機会を減らすこと、即ち人がいなくても、リモートでも、工場や職場が機能しなければならない、人が足りない、熟練者の技能継承問題などが急激に加速したように感じます。

稲葉: 確かに人手不足を解決するため、製造を継続するために必要な自動化が正に来ているということですね。私も立ち位置が変わったと思います。そのような状況下で力を入れているのが、「導入しやすい製造現場での自動化」をパートナの方々と共に普及させることです。

奥山: 我々もさらに高度なことを目指しています。「自動化」は、今まで、できなかったことをロボットシステムの活用で当たり前のように成すことが大切だと思っています。HCIは自社でAIやIoTも構築しているのでスマートファクトリーやスマートなサービスであるロボットが調理し、配膳しモバイルオーダーまでをシステム化した、ロボカフェなども営業しています。

稲葉: ロボカフェは先進的ですね。様々な用途において使いやすい自動化の要素にロボットがなれるように目指したいと思います。

コメント
普段はなかなか見学できないファナック社の工場見学や施設を見学し、創業者の思いを聞いた後の対談は、さらに密度の濃いものになりました。これまでの歴史については語りつくせないほどでしたが、次回はいよいよ、今、どのようなことをしているのか、お二人の現状の仕事のお話をしてただきます。どうぞ、お楽しみに。

<稲葉清典さんプロフィール>カリフォルニア大学大学院バークレー校機械工学専攻修了(博士)。2009年入社。一貫してロボットの研究開発に携わり、2011年に「学習ロボット」の開発部長に就任。2013年に研究所長、2016年からロボット事業本部長として、ロボットの開発と販売を統括。産業用ロボットは同社の主力事業の一つだが、さらにロボット事業の拡大を目指している。