対談
第14回:(株)HCI代表取締役 奥山浩司(剛旭) × 井元剛
ロボットと共に平和な世界へ(最終話)
「日本人は平和ボケだ」とネガティブな意味合いでいう人たちがいます。「高齢化社会になってどうしよう」と不安に感じるばかりの人もいます。しかし最先端で未来を支えようとしている二人にとっては視座が大きく異なります。発想が異なれば、作り上げる世界も変わっていくようです。
宮西: お二人が抱くビジョンについて。特に社員の方たちに伝えていることを教えてください。
奥山: 私が話していることは「世界平和、人類救済」に尽きます。これは創業当時からの揺るぎないビジョンで、このゴールに対して、我々ができることを地域、ユーザーさん、お客様に対して熟考し、その方が幸せになることを願って仕事をしています。結果、それが「世界平和、人類救済」につながるのではないかと思います。
井元: 私のビジョンも「世界平和と人類の存続」です。今、地球上には70億人がいます。今後20年間に100億人を突破するといわれ、ある学者によると地球上の資源を使い切って存続できる人類の数は90億人が限界とのことです。でも海中や海上に人工的な都市を作り、そこに住めば120億~130億人は暮らせるのではないでしょうか。そのためには海中で作業するロボットも必要です。もしかしたら魚みたいな身体に作業用の手をつけたロボットが登場するかもしれませんね。
奥山: それは面白い!
井元: 人間が生存圏を拡大していこうと思ったら最終的には宇宙にいくことです。SFではないですがコロニーを作り、宇宙空間で作業をすることになりますが、ここでロボットが役に立ちます。過酷な環境ではロボットに仕事をしてもらい、その後で人間がいけばよい。将来的には夢物語ではなくなるでしょう。同時にAIも必要になるでしょう。しかしそこに至る前に、すでに医療や介護などの現場で役立つロボットができているはずです。
奥山: ロボットやAIというと、概念的に遥か未来のことを考えてSFのような世界だけを想像してしまいがちですが、そうなるには、まだまだ時間がかかるわけで、まずは目の前の問題をひとつずつ解決することに力を尽くすことですね。その過渡期に我々がいるわけですね。
宮西: お二人は最先端のロボットとAIの技術を日本から発信していこうということですね。
奥山: 勿論です。これからの時代、日本からしかできないことだと自負しています(笑)。
井元: ロボットもAIも最終的に人様の命を預かるものです。ならば信頼できる国に作ってほしい。そして日本製は信頼できると多くの国の人が思っているでしょう。戦後70年間が経過しますが、日本は平和でした。どこからも攻められませんし、戦争もなかった。最近では少し物騒になってきたとはいえ、それでも大規模なテロもない。弊社には外国人の技術者も多いので、「日本はなんでこんなに平和なのか」と問われます。もともと日本人には、平和を好み、競い合うよりも穏便に歩調を合わせようという思いがあったのではないでしょうか。長い間、ボケるくらい平和なので、「平和ボケ」といわれますが、視点を変えてみれば、このような形でボケていられることはとても素晴らしいことです。今、日本が輸出するのは、技術や人材だけではなく、この「平和ボケ」の概念をブランド化して打ち出すことだと思います。
奥山: 私も「平和ボケ」に共感しています。私たちは当たり前のように平和な世の中で暮らしていますが、他の国を見てください。いつ侵略されるか、戦争になるかわからない危機感のなかで生活している人々がどれほど多いことか……。もともと日本には「和の心」がありました。「おれが、おれが」と自我を主張するのではなく、「みんなで」と包み込む「和の心」。だからこそ、今こそ、この心を基盤にして、日本が世界のリーダーになれると思うのです。
またもうひとつ、「高齢化」という言葉ですが、一般的にはネガティブな意味合いで使われます。しかしこれもポジティブにとらえることができます。人々の寿命が延び、高齢化になるだけの技術が日本にはあるのです。それを売りにすべきで、高齢化社会の利点をどう生かすかを考えたい。高齢者には知恵や経験がたくさんあります。そのような英知を生かして、よりよいものをプロデュースしていけたらよいと思います。
宮西: なるほど。視点を変えればネガティブだと思われていたことが、ポジティブなんですね。
井元: 日本は今や技術立国でもなくなり、その点を悲観する人がたくさんいます。しかも影響力の強い人までがそのようなことをいうので残念です。
戦後、長い間、日本は米国を手本にしてきましたが、今や、それは必要なくなったと思います。米国の人は幸せですか? GDPが上がりましたか? 日本の場合、GDPよりも目に見えないところで「治安を維持している」というブランドができつつあることに、みなさん、気付いてほしい。
今、日本ではコスト削減のために海外に工場を作っていますが、品質管理のみならず、日本の精神も伝えてほしいと思います。今後は海外の工場でもAIが生産管理をしたり、現地で採用する人の教育を補助したりして、日本の技術を伝えると共に、「平和ボケ」や「高齢化社会」の素晴らしい概念も伝えられたらよいと思います。今や和の心や日本人の組織論などを含めた「日本式思考パターン」を輸出すべき時なのだと思いますよ。
宮西: 素晴らしい。お二人の発信する強力な力で世の中が変わっていきそうですね。
奥山: 私は今回の井元社長との出会いに大いに感謝していますし、9DWのAI技術とHCIのロボット技術。これが融合して楽しくイノベーションができると確信しています。なんといっても楽しさがイノベーションの根源ですからね。これからも人々の役に立つ技術の革新をしていきたいし、このようなネットワークをどんどん広げていきたい。我々は東京と大阪と離れていますが、ぜひとも協業していきましょう。
井元: AIには最終的に体が必要ですからロボットの存在は欠かせません。そういう意味でも、奥山社長との出会いは運命的で、感謝しています。今後は海外拠点も考え、優秀な技術者を育てたい。我々が集めたいのはAI技術者ですが、ロボティクスの技術者も周辺にいるので、一緒に行えば、より早く明るい未来像の展開ができると思いますよ。
奥山: 我々ロボットメーカー、そしてロボットシステムインテグレーターが自らの役割としてAIを搭載したロボットを開発することにより、ある会社や人々が幸せになる。そしてその積み重ねが地域貢献になり、日本はもとより世界に対する貢献につながったら嬉しいですね。まずは拠点になっている泉大津市にロボットを提供し、市民の方には、身近にロボットの存在を感じてもらいたいと思います。特に若い人や子供たち、これからモノづくりをしたい人たちに親しんでいただき、同士を増やしていきたい。それは、我々の使命のひとつではないかと思います。
宮西: 明るい未来を感じワクワクしてきました。ありがとうございました。
(最終話終了)
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ロボット開発者とAI開発者の見つめる先は「世界の平和と人類救済、そして存続」。大志を抱いた二人の経営者が築き上げる世界は、きっと素晴らしいものになるでしょう。お二人の協業を楽しみにしています。