対談
第50回:(株)HCI代表取締役社長 奥山浩司(剛旭)×ロボットテクノロジー企業「GROOVE X」 創業者 林要CEO
お二人の未来:ヴィジョン(最終話)
産業ロボットとコミュニケーションロボット。現在お二人は時代を先取りするロボットの開発に取り組んでいますが、今後、どのようなロボットを創っていきたいのでしょうか? どのような未来を作り上げていきたいのでしょうか? 将来的なヴィジョンなども伺いました。
宮西: 未来のビジョンについて教えてください。
林: 人の代わりに仕事をするロボットのテクノロジーの進化は、今後もとまらないと思います。それは機械が人より上手に仕事をこなす機会が増えていくという意味ですが、その変化の中で人が自分の存在意義を見失うことも増えてくるかもしれません。そのときに、人はテクノロジーの進歩で幸せになっているのかという視点を忘れてはいけないと思うのです。テクノロジーは人が幸せになるために進化することが大切です。 人がテクノロジーの進化の過程で、より良い明日が来ると信じられない人が増えていくなら、それは何か軌道修正が必要な証です。私達は人々がより良い明日が来ると信じられるようなテクノロジーの使い方を模索していきたいと思っています。
例えば人が元気がないとき、コンパニオンロボットが寄り添い、働きかけることで、人がまた明日から頑張ろう、と思えたら最高です。そのよい例がドラえもんだと思っています。実際にペッパーの開発過程では、人がロボットを応援することで元気になるというシーンを目撃したことがあります。人間はロボットにお世話をしてもらうより、お世話をしてあげることで幸せになったりする。そういう関係性にも注目したいですね。
奥山: 自分はロボットこそが、これからの日本の基幹産業になると思っています。例えばパソコンはWINDOWSのようなOSアプリケーションができ、使いやすくなったことで多くの方が買うようになった。多く売れるから安くなり、その結果、一人に一台の時代になりました。
そのようなことがロボットでも起きると考えています。今や、ケーブル・ワイヤーをはじめ、ものづくりは中国をはじめとした他国に流れてしまっています。ロボット(マニピュレーター)の製造まで、中国で始まっていますが、日本は元来よりロボット大国であり、誇りを持ち、ロボットシステムが、どの国にも負けないように努力を続けなければなりません。
自分はいつも地域を、日本を救いたいと考えており、救えると思っています。弊社の地元である泉大津市は毛織物業、毛布産業が盛んでしたが、今や中国や他国におされてしまっています。日本では、他の地域でも似たような現象が起きているのではないでしょうか。それをなんとかしたい。それがロボットとAIで実現できるのではないか? そういう未来を抱いています。
宮西: 人によってはテクノロジーの発達が人間に害を及ぼすといいますが、ロボット社会での人間の在り方を教えてください。
林: 道具を使うのは人間の特性です。歴史的に見ても、これまで人は色々なものを道具として使ってきました。例えば火は、他の動物が使わないのに、人は道具として取り込んで使います。使い始めの頃は火傷もしたでしょうし、火事もあったでしょう。つらい経験をした結果、「火を使ってはならない。火は危ない、人の手には負えない」という意見が出ていたかもしれません。それでも人は慎重に使い方を学び、長い年月をかけてテクノロジーとして道具に落とし込んでいきました。大切なことは、物事の成否を運に任せるのではなくて、人が自ら使い方を決めて、周りの人を幸せにするために諦めずに工夫をし続けていくことです。
宮西: 人々を幸せにすることが目的なんですね。
林: あらゆるテクノロジーがそうだと思います。テクノロジーの使い方次第では人や地球にとって悪い影響を与える場合もありますが、逆に大いなる恩恵を与えることもあります。
ロボットも同様で悲観シナリオを作ろうと思えばいくらでも作れま す。一方、楽観シナリオを作ろうと思えば、今の自分達では想像できないぐらい新しい未来も描けます。
最終的には、テクノロジーで人を幸せにするという「決意」があるかないかだと思います。 ロボットがいる社会といない社会を考えたら、確実にロボットがいる社会の ほうがよい社会になると私は思っているのです。
奥山: 素晴らしいです。まさに林さんのおっしゃる通りです。これまで人類には第1次産業革命や第2次産業革命など、いろいろなテクノロジーの変化の波がやってきました。そのような時に必ず「ノー」とおっしゃる人がいらっしゃいます。林さんは「決意」とおっしゃいましたが、その決意がなかなかできない。今の状況のままでいたいという人たちはいつの時代にもいると思います。
産業用ロボットは、きつい、汚い、危険といわれる3K職場での仕事で、既に人のお役に大いに立っています。人にとっては苦痛を伴う現場でロボットが役にたってくれる。人がやりたくない仕事をロボットがやってくれる。そうすれば苦しい仕事から解放される人間が増えます。そして、その人達は、もっともっとクリエイティブな仕事ができるわけです。楽しく仕事ができ、自己実現の世界が必然的に、全世界の人々を平和へと導くと信じています。
奥山: ところで林さんはスタートアップに対してどのようなご意見をお持ちでしょうか。
林: スタートアップを「新産業をつくる」という意味で捉えると、日本は高度成長期に大いに活躍してきた分野です。もともと「改善する」というプロセスは日本人が得意にしている分野です。加えて実は新しいことを開発するのも得意なのです。
例えばタイムズ誌が、「史上最も影響力のあるガジェット50」を掲載したときに、かなりの数で日本から影響力のある製品が出ていたのがわかります。これは世界の中での日本の人口比率から考えても非常に多いので、日本は改良だけでなく発明も得意だと言うこともできます。
でも発明するにはリスクが必要です。新しい仕事をする場合、大きい会社は既存事業の収益の最大化に合わせた仕組みができているからこそ、効率がよく、品質が安定しています。
ただ全く新しいことをしようとすると、その仕組が足かせになる事も多い。そこで注目されるのが小さい組織や新しい組織ではないでしょうか。
もし大企業でやりきれないならば、スタートアップこそ、新しいことへのチャレンジに適しています。日本は 新しいものを作り上げる土壌があります。日本人は不安を感じやすい国民性と言われていて、それが大志を持ったスタートアップを生み出す足枷になりがちですが、その不安さえ乗り越えられたら、日本において新しいことにチャレンジしていくスタートアップ企業は有益だし、大いなる学びのチャンスがたくさんあると思います。
奥山: そうですよね。自分はスタートアップするためには、大企業の中でひとつの歯車となっているよりも、小さな組織で仕事をし、学んだほうがスピード感や達成感を感じとれると思います。それは自分自身がやってきて大いに実感していることです。とはいえ現状ではスタートアップをグローバルのレベルにもっていきたいと思っても、まだまだ日本では難しいと感じています。それを一人一人に啓蒙していけたらいいなと感じています。
もうひとつ、今後、国力はどうなるのかということを考えなければなりません。自動車がもはや成長産業と考えられなくなった今、ロボットがその役目を担うのではないかと思います。
ハード面の「フィジカル」は、元来、日本が強かった。「サイバー」においてはGAFAに負けてきたとは思いますが、でも今、いよいよ、「サイバーフィジカル」で日本が勝ちに行く時代になったと思います。
今まで遅れをとったことを反省し、「サイバーフィジカル」に夢を抱き、外貨を稼げる若者がこれからどんどん出てきたら嬉しいですね。
宮西: 未来に希望がもてますね。本日は素晴らしいお話をありがとうございました。(最終話終了)
コメント
テクノロジーの進歩は人間を豊かに幸せにするために必要。そしてそれを実現するのは作る人、使う人の決意と意識。人類を滅ぼしたり、発展させたりするのも人間次第だということを学び、これから多くの若者が新しい挑戦に挑んでいったら素晴らしいと感じました。それにしてもLOVOT(らぼっと)の愛らしさには感動の連続。「GROOVE X」で制作しているYouTubeのライブでも見ることができるので、ぜひともLOVOT(らぼっと)たちの可愛さを味わってください。